経営コンサルティングのスペシャリストと言われる中小企業診断士ですが、
名前は知っているけどよく分からないなぁ
という方も多いと思います。
ここでは改めて中小企業診断士の魅力、将来性や資格取得後のキャリアプランについてご紹介していきます。
中小企業診断士とは
経営戦略、組織構築、人事制度、労働生産性の向上、財務・会計、経済学、店舗経営等多岐にわたる専門知識を有し、「ビジネスパーソンが新たに取得したい資格 第1位*」にも選ばれたことのある、日本唯一の経営コンサルタントの国家資格です。日本版MBAと呼ばれることもあります。
*「新たに取得したい資格ランキング」(日本経済新聞・2016年1月12日付)より
中小企業診断士の業務はその名前の通り、主に中小企業の「経営の診断及び経営に関する助言」とされています。現状分析を踏まえた企業の成長戦略のアドバイスが主な業務ではありますが、現在ではそのアドバイスだけに留まらず、その知識と能力を活かして幅広く活躍しています。
具体的には、中小企業の経営者が策定した成長戦略を実行するに当たって具体的な経営計画を作成し、その実績やその後の経営環境の変化に対応した支援も行います。そのため、専門的知識の活用はもちろんのこと、企業と行政、企業と金融機関のパイプ役を担ったり等、さらに活躍の場を広げています。
試験科目
中小企業診断士の試験科目は大きく7科目あり、
①経済学・経済政策 ②財務・会計 ③企業経営理論 ④運営管理
⑤経営法務 ⑥経営情報システム ⑦中小企業経営・政策に分けられます。
経済学、経済政策
マクロ経済、ミクロ経済といった経済学の観点から論理的に説明する知識を問われます。商品の価格がどのように決定するのかなど、経済全体を把握する能力が身に付きます。
財務・会計
企業活動を運営する際の資金調達や投資に関する内容が主なテーマで、損益計算書などの財務諸表の見方や証券投資についても学びます。
企業経営理論
企業を運営する際の戦略やマーケティングに関する知識、経営組織を運営するための従業員のモチベーション管理など、中小企業診断士として仕事をしていくうえで基礎となる科目です。
運営管理
販売店での商品の陳列方法やレイアウト、販売路線別の戦略等店舗を管理するうえで重要な知識について学びます。普段行くことの多いコンビニやスーパーをイメージしながら勉強できるので、非常に面白い科目です。
経営法務
会社を設立するための要件、仕組みを理解するための会社法や、著作権などの知的財産権について学ぶ科目です。ITの発展により知的財産権の侵害が増えてきているため、会社のコンプライアンスを遵守するための法律からの出題がメインです。
経営情報システム
中小企業ではIT関連の会社も多く、中小企業診断士と言えどもITの知識は欠かせません。情報システムにおける基礎知識や情報システムを利用した運用の管理、情報システムを経営に活かすためのスキルについて学びます。
中小企業経営・政策
中小企業に対し経営コンサルタントを行うための経営の動向や、補助金・助成金などの支援施策について学ぶ科目です。
おススメポイント
- 経営者の視線に立った思考力が身につく
- AIでは代替不可能な経営コンサルに関わる仕事
- 職場での昇進や転職、独立開業など将来のキャリアの幅が格段に広がる
経営者の視線に立った思考力が身につく
現在大手企業にお勤めの方は、効率良く仕事ができる反面個々の業務内容が細分化されてしまっており、今行っている仕事が企業経営の中でどのような役割を果たしているかが見えづらくなっています。
中小企業診断士では企業経営に関する知識を一通りマスターすることができ、経営に対する考え方や物の見方が変わってきます。
どの商品をどこで仕入れ、どのような販売路線で展開しマーケティングを行い、自社の商品を販売していくのかなど経営者目線に立った思考力が身に付き、経営における現在の課題を洗い出し、解決するための手段が身に付きます。
日本版MBAと言われる中小企業診断士は企業の経営資源と言われる「ヒト・モノ・カネ・情報」全てを網羅し横断的に物事を捉えられる知識、スキルを得ることができるのです。
実際に会社勤めの方でも課長や部長、役員などの役職に就いている方は中長期で物事を捉え、企業を正常に経営していくための施策を日々考え仕事をしています。
現在そのような役職についていない方は将来幹部になった際に経営者目線で会社の経営に携わることができ、現在役職についている方でもより専門的な知識を活かし、さらに高度な企業運営をすることが可能になります。
世の中にある会社の99%は中小企業と言われています。
自分は大手企業に勤めているし関係ないかな。
と思っている人でも先ほどのように経営に関わってくる機会や取引先が中小企業だったり、今後社会人として働くうえで必要な知識がこの中小企業診断士の中には詰まっています。
AIでは代替不可能な経営コンサルに関わる仕事
以前日経新聞の記事で、中小企業診断士がAIに代替される確率という記事の内容が掲載されておりましたが、その確率はなんと驚愕の0.2%!!
それには様々な理由があるのですが、それには
この3点が理由として大きいと考えています。
中小企業診断士の根底にある業務は、中小企業の経営面でのコンサルティングです。
中小企業主とのコミュニケーションの中で相手が気づいていない潜在的な課題を会話の中から引き出し、解決するという高度な技術はAIではできません。
また会社の資金調達で必要な補助金や助成金についてもその年によって要件が変わることが多く、常に新しい知識を求められます。
財務・会計の分野では一部AIの導入が予想されますが、多くの部分がまだ人でしかできない分野が多いのが中小企業診断士の特徴でありメリットでもあります。
このAIに代替する確率が0,2%という数字は弁護士の1,4%より優れており、士業の中では1番の数字です。
職場での昇進や転職、独立開業など将来のキャリアの幅が格段に広がる
中小企業診断士の資格を取得した後は様々なキャリアプランが用意されています。
現在会社勤めをしながら中小企業診断士の資格を取得する方が多いため、そのまま会社勤めをし自社で専門知識を活かす方もいれば、今勤めている会社より条件の良い会社へ転職をする方、独立開業をする方など様々です。
継続して勤務される方であれば会社から資格手当をもらえる可能性もあり、既に資格取得の段階で経営の手法を学んでいるため、昇進も早いでしょう。
転職であればコンサルティングを行っている会社は忙しい反面給与が高いのが特徴です。資格で学んだことを活かしコンサルティング会社で実務経験を積むのも良し、いきなり役職者として転職するのもいいでしょう。
独立であれば中小企業診断士として中小企業専門の経営コンサルティングを行うという方法もあれば、既に自分で経営の手法を学んでいるので、全く別の事業を立ち上げ、会社を運営していくというのもありですね。
このように中小企業診断士の資格を取得するだけで今後の社会人としてのキャリアパスが大きく広がり、選択しが格段に増えるのです。
資格取得までに必要な勉強時間
中小企業診断士の資格を取得するには1次試験、2次試験と2回の試験に合格する必要がありますが、勉強時間の目安はおおむね1,000時間と言われています。
さすが難関資格と言われるだけはありますが、大学が経済学部出身だったり既に簿記の資格を持っている方であれば、さらに少ない勉強時間で合格できる可能性も高いです。
どちらにしても他に紹介してきた資格の中では長い勉強時間が必要になってきますが、その反面資格の価値は勉強時間に比例して大きいのが特徴ですね。
ただ中小企業診断士にはそれほどの魅力がありますよ!
合格率、試験日程
では次に合格率について見ていきましょう。
1次試験の受験者数・合格数・合格率推移データ
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
平成30年 | 16,434人 | 3,236人 | 21.7% |
平成29年 | 14,343人 | 3,106人 | 21.7% |
平成28年 | 13,605人 | 2,404人 | 17.7% |
平成27年 | 13,186人 | 3,426人 | 26.0% |
平成26年 | 13,805人 | 3,207人 | 23.2% |
平成25年 | 14,252人 | 3,094人 | 21.7% |
出典:一般社団法人中小企業診断協会ホームページ
2次試験の受験者数・合格者数・合格率推移データ
年度 | 受験者数 | 合格者数(筆記) | 合格者数(口述) | 合格率 |
---|---|---|---|---|
平成30年 | 4,978人 | 906人 | 905人 | 18.8% |
平成29年 | 4,279人 | 830人 | 828人 | 19.4% |
平成28年 | 4,394人 | 842人 | 842人 | 19.2% |
平成27年 | 4,941人 | 944人 | 944人 | 19.1% |
平成26年 | 4,885人 | 1,190人 | 1,185人 | 24.3% |
平成25年 | 4,907人 | 915人 | 910人 | 18.5% |
出典:一般社団法人中小企業診断協会ホームページ
1次試験、2次試験ともに20%前後で推移していますね。
ただし科目別に足切りの基準(点数が4割に満たない科目があると、それだけで不合格)があるので、科目別に弱点を作るのは禁物です。
試験日程に関しては1次試験は毎年8月の第1週の土日に2日間かけて行われる予定で、2次試験は10月の第4週の日曜日に行われる予定です。
※2020年は東京オリンピックが開催されるので、7月に前倒しで行われる見込みです。
詳しくは中小企業診断協会のホームページでご覧ください。
まとめ
- ビジネスパーソンが新たに取得したい資格ランキング第1位!経営に関する知識を網羅できる、唯一の経営に関する国家資格
- AI代替率0,2%!ヒトにしかできない高度な知識、スキルが身に付く
- 将来のキャリアパスが無限に広がる将来有望な資格
資格は一生ものと言いますが、中小企業診断士は国家資格の名に恥じない非常に有用な資格です。勉強の仕方次第では短期間での合格も可能ですので、ぜひ挑戦してみてください。